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2009/11/09

小説のような一日

Beach_girl普段は黒を着ることが多い私だけれど、その日は顔映りのいいショッキングピンクのカーディガンを羽織り、唇にも同じカラーのリップスティックをのせた。短い丈のスカートをはいて、“若作り”をしているのではなく“大人のお洒落”をしているのだと主張するためだ。

行き先は、近所の車の修理屋。こういうところで華やかに振る舞うことは、アジア人で大衆的な'アメ車'に乗る私が、ちゃんとした気持ちのいいサービスを受けるための手段だと思っている。

案の定、担当の男は挨拶代わりに軽いジョークを言い、明るい笑顔を向けてくれた。「ほらね」私は自分が正しかったことを確認し、心の中で微笑んだ。

こういう日は、目に映るすべての景色が小説の中の描写のようだ。私の頭の中では、勝手に文章がそれらしい体裁で踊りだしていく。たとえば、今日のこのブログのように。

車の修理を待つ間、近くのカフェで本を読むつもりだった。カフェは、早めのランチをとる人たちで混み始めていた。私は隅っこの狭い特等席を見つけ、カフェラテをトリプルショットでオーダーした後、待ち時間が長くなることを予想して$1.98のチョコレートチップ・マフィンをうっかり追加した。大味のマフィンを口にしたとたんに、買ったことを後悔することは目にみえていたのに。

私はキレイに足を組み、背筋を伸ばし、後悔のマフィンを頬張った。大体私はいつもそうなのだ。オマケでしくじる。すべてが順調にいっている時に、よけいな一個を抱え込む傾向にある。

カフェオレで後悔を流し込みながら、ふと左斜め100度の角度から男の視線を感じた。誰かが私を見てなにかを考えているのだ。振り向く勇気はない。私に興味を持ったのか、あるいは単に、たとえば靴にゴミがへばりついているのを見つけただけなのかもしれない。それが私の妄想(大いなる勘違い)だとしても、こんな小説のような景色の日は、それを楽しむことにしよう。

言葉が頭の中で踊りだすのを感じながら、左斜め15度の角度に座った老夫婦に視線を移した。首のしわのたるみ、目のくぼみ、歩き方のよぼよぼ加減からいって、80代も後半の方かもしれない。私の目は、その婦人の背中に釘付けになった。まっすぐなのだ。まるで板でも入れているかのように、すーっとまっすぐに伸びていている。年齢にそぐわない違和感からなのか、あるいは美しさからなのか、私の意識は先ほどの妄想を払拭して立ち止まった。

男性は、婦人の目の前に置かれたクロックムッシュを、ナイフとフォークを使って小さく切り分けている。食べやすいように、そうしているようだった。彼女は、夫がそうしている間も姿勢を一つも崩さず、無表情ではあるけれど美しく佇んでいた。

テーブルの脇を通る若い女性たちと時折言葉を交わして笑う夫に、不快な態度を示すわけでもなく、一緒に会話に加わるでもない彼女のあまりにも毅然とした姿は、老人性の病を示唆しているのかもしれない。

しばらくして食事を終えた夫婦は、出口近くのテーブルに座る母娘の前で立ち止まると、小さな女の子になにやら熱心に話しかけていた。婦人は背も高かった。あの年齢で170cmを超えた身長の女性というのはかなり目立つ。右手を持ち上げると、婦人はさらに大きく見えた。その姿は翼竜を思い起こさせた。持ち上げた右手で女の子とハイファイブを交わすと、満面の笑顔でカフェを出て行った。

と、言うような一日というのは、毎日転がっているんだな、実は。
(写真は本文とは関係ないばかりか、長瀬氏撮影の写真を無断借用していますbleahよろしいですかー?)

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コメント

ユリ・ジュリアンちゃん
お、お、お、お、お洒落な感じの恋愛小説で、で、で、で、ですか?
でも、お洒落な恋愛って、どういうものでしょうか…
やってみるかなあ、せめてお話の中だけでも。

Aquicoさん
ちょうど貴女のことを考えていたところのコメントでした。
ありがとう!
背筋がピン!それは私の憧れであり、目標なんですよ。
ちょうどユリ・ジュリアンちゃんのそれのようにね。
見たことあります?すごいですよairplane

投稿: Jeannie | 2009/11/11 07時59分

背筋のスッと伸びた老婦人。
近ごろ日本でも見かけたゾ☆
でもって、笑顔がステキなの。
こんなステキなお年寄りが増えてくれると、こっからの高齢化社会も、何やら美しく思えるんだよね。
(もちろんニホン人なので身長170なんてことはないのだけど、スッと伸びた背筋ってのは重要だと思いました)

投稿: Aquico | 2009/11/10 14時19分

すてきな文体heart04
Jeannie姐さんを見つめていた男性に声を掛けられたわけではないのね?
今日の記事でピンと来たんだけれど
こんなかんじのお洒落な恋愛小説が読みたいなー。
姐さんの恋愛小説、ぜひ期待したい。

投稿: ユリ・ジュリアン | 2009/11/10 01時05分

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